健康食品&サプリメントWATCH

A4用紙1枚程度で示す、健康食品やサプリメントについて調べた記録

Dear-Natura甘草グラボノイドが「体脂肪の増加を抑える」とする根拠について調べてみた(後編)

前回の「Dear-Natura甘草グラボノイドが「体脂肪の増加を抑える」とする根拠について調べてみた(前編)」の続きです。

科学的根拠について考えてみた…

ここからが本題(私なりに考えたこと・気になったこと…等)です。
予めお断りしておきますが、個人的な考えであり、あくまでも参考にということでお願いします。

BMIの増加抑制は機能性「体脂肪の増加を抑える」の科学的根拠になるの?

BMIは、体重と身長の関係から人の肥満度を示す体格指数であり、「BMI=体重kg÷(身長cm)2」で算出されます。つまり、BMIの変化の図(左図)は体脂肪の増加を抑えることを示したものではないです。

体脂肪量の変化の図(右図)と合わせて「体重を増加させることなく体脂肪を減らした」との説明でしょうか。そうであった場合、左図と右図はそれぞれ別の試験からの図であることから、そのように合わせて結論めいたことを言うのはどうなのかなと。

体重(kg)の減少よりも体脂肪量(kg)の減少の方が大きいのは何故?

それぞれの試験のデータを参照してみます。まず、右図の臨床試験から。
なお、この試験の論文(参考文献(4))は有料なので、「届出A60グラボノイド」の届出資料を参照しました。

体脂肪量(kg):
対象群  投与前22.65±1.12 → 8週後22.30±1.24(-0.35)
甘草由来グラブリジン摂取群 投与前22.56±1.29 → 8週後21.64±1.31(-0.92)

体重(kg):
対象群 投与前73.13±2.20 → 8週後73.39±2.22(+0.26)
甘草由来グラブリジン摂取群 投与前71.09±1.98 → 8週後70.81±1.97(-0.28)

この結果をみると、甘草由来グラブリジン摂取群で体脂肪が0.92kg減少しているところ、体重は0.28kgしか減少していません。つまり、体重(kg)の減少よりも体脂肪量(kg)の減少の方が大きい。体重が0.92kg以下しか減少していないということは、体脂肪の代わりに筋肉が増加したのでしょうか。

理由が分かりません。

通常、この類の試験では、試験結果への影響の懸念から試験中の食事・運動習慣の変更等、試験に影響を及ぼすようなことを禁止するものですが、そうであれば筋肉量が増加したとは考えにくい。論文に考察がされているのかもしれませんが、有料なので確認できないです。

TG値を減少し、腹部脂肪組織量を減少するのではないの?

These findings suggest that LFO decreases hepatic and plasma TG levels by regulation of rate-limiting enzymes involved in fatty acid synthesis and oxidation in the liver, which in turn results in decreases in abdominal adipose tissue weight.

日本語にすると「これらの結果は、肝臓において脂肪合成および酸化の律速酵素を制御することにより肝臓および血中TG(トリグリセライド)値を減少し、腹部脂肪組織量を減少したことを示している」って感じでしょうか。

これは作用機序で引用している論文に記載されている一文です。

ところがです。

Y Tominagaら 2006(http://doi.org/10.1248/jhs.52.672)の論文、つまり、甘草由来グラブリジン摂取群ではBMIの増加が抑えられたとする結果の論文からですが、甘草由来グラブリジン摂取群では12週後にトリグリセライド値が増加しています。逆にプラセボ群では減少。

トリグリセライド(mg/dL):
プラセボ投与前150.7±10.8 → 8週後145.4±10.9(△5.3)→ 12週後136.4±9.1(△14.3)
甘草由来グラブリジン投与前141.5±10.8 → 8週後135.3±10.5(△6.2)→ 12週後149.1±20.5(+7.6)

動物試験論文と臨床試験論文とで矛盾というか違和感を覚えます。

また、甘草由来グラブリジン群では8週まではトリグリセライド値が減少していながら、12週後に急増しています。SD値(±20.5)が大きいことから1人~少数の被験者で増加を認めたことが想像できます。これって、有害事象には該当しなかったのでしょうか。論文に考察がなかったような。

順番が逆?

Tominagaら2006年発表の論文とTominagaら2009年発表の論文ですが、2009年に発表した試験の方が先に実施されていたようです。両試験の論文およびアブストラクトを読むと分かります。

2009年の論文はPubMedでヒットするような学術誌に掲載された論文ですが、2006年の論文はPubMedでヒットしません。一方、Googleで検索すると日本語で「別刷料金」の一覧が出てきます…。また、2006年の論文は、読みにくさを感じます。本当に査読されたのか…。

まだまだ他にも思うところがありますが、この辺りで。

繰り返しますが、あくまでも私個人の印象であり、このような考え方をする人もいるのだなという参考程度に願います。

  • 管理人はこんな人

    こんにちは。
    私は、薬剤師の資格を持つ元製薬会社社員。退職後は医学論文の素案作成、そして資格や経歴と無関係の仕事を主にしてます。
    知人から薬について相談されたことをきっかけに、一般用医薬品や健康食品について勉強を始めたところです。
    「健康食品&サプリメントWATCH」は、勉強した内容、そして考えたことをA4用紙1枚程度に書き出した、いわば個人メモです。個人メモですが、どなたかの役に立つことを願って...。
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