機能性表示食品えんきんの機能について調べてみた
基本情報
えんきんは、「手元のピント調節機能を助ける」という保健の目的が期待できるとして消費者庁に届出された機能性表示食品です。以下は届出された基本情報です。
- 機能性関与成分:
- ルテイン、アスタキサンチン、シアニジン-3-グルコシド、DHA
- 届出表示:
- 本品にはルテイン・アスタキサンチン・シアニジン-3-グルコシド・DHA が含まれるので、手元のピント調節機能を助けると共に、目の使用による肩・首筋への負担を和らげます。
- 主な対象者:
- 健康な成人男女
- 届出番号:
- A7
えんきんがどのように働くのか(作用機序)
背景情報 ~ 目のピント調節
ピント調節の仕組みは、近くを見るときは毛様体筋が緊張して水晶体が厚くなり、遠くを見るときは水晶体が薄くなりピントを合わせます。つまり、毛様体筋の緊張により水晶体の厚みを調整しており、毛様体筋の筋力が低下するとピント調整力が低下するということです。
作用機序
届出資料は作用機序について詳しく説明していますが、極めて簡単に示すと以下のようになると思います。(正確には届出資料を参照ください)
・ アスタキサンチンは、毛様体筋機能低下の抑制に等より、ピント調節機能を改善する。
・ シアニジン-3-グルコシドは、血管弛緩作用や毛様体筋の弛緩作用を示す。
・ DHAは、毛様体の構成成分に寄与し、毛様体の状態を健全に保つと考えられる。
・ ルテインは、黄斑部や水晶体でアスタキサンチンの抗酸化力を増強する。
機能性の科学的根拠(エビデンス)
機能性食品としての届出の際、機能性の科学的根拠の提示が求められています。えんきんでは、最終製品を用いて実施した臨床試験の結果を示しています。
- 被験者:
- 日常的に目の疲れを感じている中高年男女(平均年齢:52.8歳)
- 方法:
- 50例をえんきん群25例、プラセボ群25例のいずれかに無作為割付し、摂取前および摂取4週間後の近点調節力および自覚症状を評価
- 結果:
- ピント調節力の変化:えんきん群がプラセボ群に比べ有意に高かった(下図)。
自覚症状:肩・首筋のこり、目がかすむで両群間に有意な差が認められた(下表)。 - 文献:
- Konoら2014(PMID: 不明。PubMedに登録がない模様)
煩すぎ君の私が考えたこと
手元のピント調節機能を助ける
Konoらの試験では、KOWA NP アコモドメーターを用いて近点距離を測定し、調節力(D:diopter)を算出しています。結果は、えんきん群で5.033Dから6.345Dへとピント調節力が有意に改善しています。対照群(プラセボ群)では改善がみられていません。
調節力(D)=1÷近点距離(cm)×100の計算式から試しに近点距離(ピントが合う、目から一番近い距離)を算出すると、19.87cmから15.74cmに改善しています。つまり、より近くの物にピントが合うようになっています。
気になることがあります。眼科検査法ハンドブックの「調節力の年齢別平均値」によると、50歳の調節力は2.5Dのところ、この試験の被験者(平均52.8歳)は摂取前から5.0Dの調整力がありました。対象が「日常的に目の疲れを感じている中高年男女」にしては高すぎるように感じます。(矯正視力の人だと計算方法が異なるのでしょうか?)
肩・首筋への負担を和らげる
えんきん群では「肩・首の凝り」が4.381ポイントから3.667ポイントへと有意に改善しました。(5段階評価。1:症状なし、5:最も重い)
この試験では眼精疲労の症状として15項目について評価していますが、例えば「目の疲れ」はえんきん群(22例)で約0.54ポイント、対照群(24例)で約0.58ポイントと同等の改善を示すなど、15項目中13項目で両群間に差が認められていません。言い換えれば、両群間で改善に有意な差が認められたのは「首・肩の凝り」および「かすみ目」の2項目だけです。論文ではこのことに関して一切考察されていません。
論文と掲載誌
この論文ですが、考察(Discussion)で試験結果の考察がほとんどありません。考察は、各成分の作用に関する記載が大半あり、質の高い論文とは言えないと思います。
考えたこと。思うこと。
臨床試験でピント調整の改善が確認されていますが、小規模試験1試験の結果です。また、眼精疲労症状では15項目中2項目のみの改善など、機能の根拠としては弱いと感じられます。
さいごに
以上、A4サイズに治まる程度での「えんきんの機能について調べたこと」でした。
なお、「煩すぎ君の私が考えたこと」は調べた範囲で私が考えたこと、思うことであり、あくまでも個人の感想であるとご理解ください。
A4版は下のリンクから。PDFファイルが開きます。
機能性表示食品えんきんの機能について調べてみた