機能性表示食品 快眠サプリの機能について調べてみた
基本情報
快眠サプリは、「朝目覚めた時の疲労感を軽減する」という保健の目的が期待できるとして消費者庁に届出された機能性表示食品です。
- 機能性関与成分:
- L-テアニン
- 届出表示:
- 本品にはテアニンが含まれます。テアニンには朝目覚めた時の疲労感を軽減することが報告されています。
- 主な対象者:
- 成人男女
- 届出番号:
- A151
快眠サプリがどのように働くのか(作用機序)
作用機序
届出資料は作用機序について詳しく説明していますが、簡単に書くと以下のようになると思います。(正確には届出資料を参照ください)
・ 睡眠段階へ移行に従いα波が出現するが、テアニンはα波の出現を促進して円滑な入眠過程を進行
・ 抑制系のGABA作動性ニューロンに作用し入眠を促進する可能性(マウス試験)
・ 興奮性神経伝達物質グルタメートの結合を抑制、睡眠を増加、促進させる(ラット、vitro試験)
・ NMDA受容体やAMPA受容体等と結合するなど、脳内神経伝達機構においても睡眠を促進している
機能性の科学的根拠(エビデンス)
機能性食品としての届出の際、機能性の科学的根拠の提示が求められています。快眠サプリでは、「機能性関与成分に関する研究レビュー」から機能性の科学的根拠を説明しています。根拠とする参考文献は2報です。
[文献A:小関誠ら2004]
・ 健常成人男性被験者22例にL-テアニン200mgを含む錠剤を6日間摂取させ、プラセボと比較
・ OSA睡眠調査票による睡眠内省尺度で、「疲労回復」および「睡眠時間の延長感」が有意な改善
・ アクチグラフにより測定した客観的指標では、L-テアニン摂取で睡眠効率が有意に改善した
[文献B:小関誠ら2008]
・ 閉経後女性被験者20例にL-テアニン200mgを含む錠剤を6日間摂取させ、プラセボと比較
・ 主睡眠期の交感神経系を有意に抑制し、特に明け方において有効
・ 副交感神経は、睡眠期全体で亢進させる傾向が認められ、入眠期においては有意に亢進された
・ OSA睡眠調査票による睡眠内省評価では「起床時の疲労回復」がテアニン摂取において改善傾向
・ アクチグラフで計測した夜間活動量は、テアニンとプラセボ間で差が認められなかった
これらの試験結果について、快眠サプリの公式サイトは以下の図を用いて説明しています。
左図(文献Aの試験結果):
テアニン摂取において起床時の疲労回復感が有意に改善
右図(文献Bの試験結果):
テアニン摂取において起床時の疲労回復感に改善傾向あり
煩すぎ君の私が考えたこと
L-テアニンについて
L-テアニンのサプリメントとしての利用について、Wikipedia英語版が「α波の発生」、「ストレス抑制」、「ADHD患者の睡眠の質改善」を記していますが、エビデンスとした臨床試験の症例数は100例以下と少ないです。また、PubMedで「L-theanine sleep」で検索すると9件しかヒットせず、L-テアニンと睡眠の研究はほとんど実施されていないことがうかがえます。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)はテアニンの臨床作用に懐疑的であり、欧州でテアニンの作用を宣伝に用いることは禁止されています。
朝目覚めた時の疲労感を軽減するの?
エビデンスに採用した2試験では、睡眠の評価として、OSA睡眠調査票(主観的評価)及びアクチグラフによる測定(客観的評価)を採用しています。
機能性の科学的根拠とした臨床試験ですが、2試験とも例数が20例程度であり、エビデンスレベルとして高くありません。しかも文献Bの試験では「疲労回復感(主観的評価)」についてプラセボとの間に有意差がありません。つまり、「疲労回復感」がプラセボと変わりなく、機能があることを示せていないと私は考えます(個人的意見)。また、この試験では客観的評価(のうちの「夜間活動量」)でもプラセボとの間に差がありません。
睡眠の評価指標について
客観的評価に用いたアクチグラフは、日常の自然な睡眠を評価できるなどの利点があり、20年以上前より睡眠障害の診断、治療評価、臨床研究などに広く用いられています。一方、OSA睡眠調査票は日本で作成された指標であり、睡眠の評価として世界的に用いられている指標(例:ピッツバーグ睡眠質問票)を採用していません。臨床試験の実施者にOSA睡眠調査票の開発者が含まれるためと思われます。
このOSA睡眠調査票ですが、「疲労回復」は3つの質問、「疲れが残っている」「身体がだるい」「不快な気分である」をそれぞれ4段階で評価した結果を複合した評価となっています。この4段階評価には、隣同士の点数が10ポイント程度ずつ異なる重みづけがされており、1段階改善しただけでも数字が10ポイント増加します。
例えば3つの質問のうち1つの質問が1段階改善、残り2つのポイントが不変だと平均して約3.3ポイント増加します。文献Bにおける睡眠の改善はこの程度だったのかもしれません。ただし、両試験とも被験者が健常成人でり、睡眠状態が良好であった可能性が高く、改善を示しにくい母集団だった可能性もあります。
考えたこと。思うこと。
あまり期待しないで6日間使ってみるのも手かと。あくまで個人の印象ですが。
さいごに
以上、A4サイズに治まる程度での「機能性表示食品 快眠サプリの機能について調べてみた」でした。
なお、「煩すぎ君の私が考えたこと」は調べた範囲で私が考えたこと、思うことであり、あくまでも個人の感想であるとご理解ください。
A4版は下のリンクから。PDFファイルが開きます。
機能性表示食品 快眠サプリの機能について調べてみた