くすり&健康WATCH

A4用紙1枚程度で示す、くすりや健康について調べた記録

気管支喘息のくすりについて調べてみた

喘息イメージ

気管支喘息とは

気管支喘息とは慢性の気道炎症であり、病因として、特定のアレルゲン(抗原)に対して感作された状態の患者に再び同じアレルゲンが侵入することによって引き起こされるアレルギー性の炎症性疾患とする考えが主流です。気道に慢性的な炎症が生じ、気流制限や気道過敏性が亢進することにより、喘鳴(呼吸時に喉のヒューヒューという音)、呼吸困難、胸部圧迫感および咳などの呼吸器症状が強くあるいは繰り返し現れます。

喘息の気管支イメージ
(図:What Is Asthma? – NIH)

喘息の病因は十分に解明されてはいないですが、以下のように考えられています。
① 抗原が体内に侵入
② 肥満細胞等が抗原を認識してヒスタミン等を放出し、細胞膜酵素を活性してロイコトリエン等を遊離
③ ヒスタミン等の気管支収縮物質により、気管支平滑筋のスパズム(痙攣的収縮)および炎症を起こす
④ ロイコトリエン等が好酸球等の炎症細胞を気管支へ誘導する
⑤ 気管支局所に集積した好酸球が浸潤し、慢性的な気道炎症と気道過敏状態を生じさせる
⑥ 慢性的な炎症により、気道傷害とリモデリング(気道傷害の修復)が繰り返され、気道壁が厚く内腔が狭くなり、難治化する

気管支喘息の診断

まず、気管支喘息に特徴的な症状、すなわち、喘鳴、呼吸困難、胸部圧迫感および咳、そして気流制限があることを確認します。症状の確認は、他疾患(ex. 心肺疾患)の可能性を取り除く上で重要となります。

また、気流制限の可逆性が喘息の大きな特徴の一つであり、1秒率(FEV1.0%)*を測定します。可逆性の判断には患者にβ2受容体刺激薬を吸入させ、1秒率が一定以上の割合で増加すれば可逆性があると判断します。

これらに加え、症状の発現や経過、家族歴等を確認した上で、総合的に診断します。

* 1秒率:呼吸機能検査の項目の一つで、息を目一杯吐き出したときに呼出される空気量(努力肺活量)のうち、最初の1秒間に吐き出された量の割合のこと。この検査は、スパイロメーターという計測機器を用いて行う。

気管支喘息の薬物療法

気管支喘息の長期管理の目標は、①症状をコントロールして健常人と変わらない日常生活を送れること、②急性発作、気流制限および副作用のリスクを最小限とすることです。

長期管理では、発作の程度と頻度から判定される重症度に応じて治療薬を選択しますが、慢性的な気管支の炎症を抑え、気道過敏性を改善することを目的として、吸入ステロイド薬がファーストライン薬となります。これに長時間作動型β2受容体刺激薬(LABA)、抗アレルギー薬、抗コリン薬等を併用します。長期管理中に発作が起きた場合には、短時間作動型β2受容体刺激薬(SABA)を吸入します。

気管支喘息に用いる薬剤と簡単な説明を下に示します(主な薬剤のみ)。

吸入ステロイド薬
気道粘膜に直接作用し、気道炎症を抑える。なお、吸入ステロイド薬は発作が出たときに抑える目的ではなく、予防を目的として用いることから、継続して使用する必要がある。安全性に関しては、口腔・咽頭カンジダ症、嗄声等の報告があるが、全身性の副作用は少ない。

吸入β2受容体刺激薬
強力な気管支拡張薬。β2受容体を刺激してcAMPを増加し、気管支を拡張させる。長時間作動型(LABA)と短時間作動型(SABA)がある。LABAの強力な気管支拡張作用に隠れて病態の悪化を見過ごす恐れがあることから、LABA単剤での使用は禁忌である。吸入ステロイド薬と必ず併用すること。

抗アレルギー薬(抗ロイコトリエン薬:LTRA)
ロイコトリエンの作用を阻害することにより気管支拡張作用と抗炎症作用を示す。ステロイド薬と異なる作用機序で抗炎症作用ならびに気管支拡張作用を示すことから、吸入ステロイド薬単独では十分にコントロールできない場合に併用するセカンドライン薬として主に使用される。

キサンチン誘導体(テオフィリン)
cAMPは気管支拡張作用を有するが、ホスホジエステラーゼにより加水分解され不活性化される。テオフィリンは非選択的なホスホジエステラーゼ阻害薬であり、cAMPを増加して気管支を拡張させる。

吸入抗コリン薬
アセチルコリンの阻害作用(抗コリン作用)により気管支を拡張し、呼吸症状を改善する。抗コリン作用のため、口渇、排尿困難等の副作用が報告されている。また、眼圧を上昇させることがある。

抗IgE抗体
その名の通り、IgEに対する抗体。高用量の吸入ステロイド薬と複数の気管支拡張薬の併用下でもコントロール不十分、かつ通年性吸入抗原に対して陽性を示し、総血清IgE値が投与量換算表で定義される基準を満たす場合に限り追加できる。簡単に書けば、重症例に対してのみ、条件があえば併用投与可。

OTC医薬品や健康食品の使用において注意したいこと

 NSAIDsは、喘息発作を誘発し、病態を悪化させることがあるため、慎重投与。
 エフェドリンは、β2受容体刺激薬やテオフィリンの中枢神経刺激作用を増強することがある。
 セントジョーンズワートは、テオフィリンの作用を増強させる可能性がある。

お断り

毎度のことですが、限られた時間で調べた限られた情報に基づくまとめであり、この限られた情報をベースに考えた個人の感想であるとご理解ください。実際の選択に際しては、薬剤師等の専門家にご相談くださいませ。

さいごに

以上、A4サイズに治まる程度での「気管支喘息のくすりについて調べてみた」でした。

A4版は下のリンクから。PDFファイルが開きます。
気管支喘息のくすりについて調べてみた

  • 管理人はこんな人

    こんにちは。
    私は、薬剤師の資格を持つ元製薬会社社員。退職後は医学論文の素案作成、そして資格や経歴と無関係の仕事を主にしてます。
    知人から薬について相談されたことをきっかけに、一般用医薬品や健康食品について勉強を始めたところです。
    「くすり&健康WATCH」は、勉強した内容、そして考えたことをA4用紙1枚程度に書き出した、いわば個人メモです。個人メモですが、どなたかの役に立つことを願って...。
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