市販の頭痛薬について調べてみた(その1)
頭痛
頭痛には、生活習慣などにより生じる一次性頭痛と、くも膜下出血のように何らかの疾患により生じる二次性頭痛があります。日本には約4.000万人の慢性頭痛患者がいるとされ、多くの方々が日常的に慢性頭痛に悩まされています。この慢性頭痛は、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の3つのタイプに分類されます。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、頭重感や締め付けられるような痛みが持続することが特徴であり、肩こりや眼精疲労などの症状を伴うことがあります。病態については未だ不明なことが多いですが、稀発反復性緊張型頭痛、頻発反復性緊張型頭痛では末梢性疼痛メカニズムが、慢性緊張型頭痛では中枢性疼痛メカニズム(ストレス、抑鬱気分)が重要な働きをしている可能性が高いとされます。
緊張型頭痛の治療薬としては、アセトアミノフェンやNSAIDsが代表的であり、推奨されていますが、長期投与による胃腸障害や薬物乱用頭痛に注意が必要です。また、カフェイン配合製剤は即効性があり有効ですが、依存性があるため薬物乱用頭痛を誘発する危険性があります。なお、慢性緊張型頭痛には、三環系抗うつ薬や鍼灸なども治療選択肢としての検討対象となります。
片頭痛
片頭痛は、光過敏・音過敏のような前兆症状、拍動性頭痛が特徴であり、頭痛が4~72時間持続します。片頭痛の原因はまだ解明されていませんが、セロトニンの関与、三叉神経終末から放出されるCGRPが片頭痛発作時の疼痛に関与している可能性が高いと考えられています。
片頭痛発作時の治療薬として、アセトアミノフェン、NSAIDs、エルゴタミン製剤、トリプタン製剤があります。軽度~中等度の片頭痛発作(初期治療)にはNSAIDsが用いられます。アセトアミノフェン1,000mg、アスピリン1,000mg、イブプロフェン200mgおよび400mgが単剤で有効との報告があります。また、AAC処方も有効との報告がありますが、ロキソプロフェン単剤での有効性についてはエビデンスがありません。
群発頭痛
群発頭痛は、ハンマーで殴られたような片側性の激しい痛みを生じる頭痛発作に結膜充血、流涙、鼻漏などの副交感神経系症状を伴うことが特徴です。頭痛発作時間は短めですが、1日に何度も発作を繰り返し、発作のある日が数日から数ヵ月間続くことからも群発頭痛と称されます。原因は、三叉神経-副交感神経の活発化が関与しているとされていますが、まだ諸説あります。
群発頭痛の治療にはトリプタンや酸素吸入が推奨されています。ドラッグストアで手に入るような通常の鎮痛薬による効果は期待できません。
OTC頭痛薬にはどのようなものがあるのか
頭痛の治療に用いられるOTC医薬品は、いわゆる鎮痛薬(ここではOTC頭痛薬で通します)です。鎮痛薬の外箱に大きく「頭痛」「生理痛」などと記載がありますが、記載されている鎮痛薬が特に「頭痛に効く」「生理痛に効く」とは限りません。OTC頭痛薬には、単味製品から複数の成分が配合されている製品まであります。
下表は、市販されている主なOTC頭痛薬です。これらは、アセトアミノフェン製剤のタイレノール等を除き、NSAIDsをベースとした製剤です。表に続き、成分ごとの特徴を簡単に記します。
商品名 | 解熱鎮痛成分 | 配合成分の作用 | 備考 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
解熱鎮痛 | 催眠鎮静 | 中枢興奮 | 制酸 | |||
ロキソニン | ロキソプロフェン | ○ | ||||
イブA | イブプロフェン | ○ | ○ | ○ | ||
タイレノール | アセトアミノフェン | ○ | ||||
バファリンA | アセチルサリチル酸 | ○ | ○ | |||
セデス・ハイ | イソプロピルアンチピリン アセトアミノフェン |
○ | ○ | ○ | ピリン系 | |
ノーシン | アセトアミノフェン エテンザミド |
○ | ○ | ACE処方 | ||
エキセドリンA | アセチルサリチル酸 アセトアミノフェン |
○ | ○ | AAC処方 |
ACE処方:アセトアミノフェン、カフェイン、エテンザミド ACC処方:アセトアミノフェン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、カフェイン
イブプロフェン
プロピオン酸系の消炎鎮痛剤(NSAIDs)であり、市販薬として世界中で入手可能。シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することにより、プロスタグランジン(PG)の生成を抑制し解熱鎮痛作用を示す。
ロキソプロフェン
プロピオン酸系の消炎鎮痛剤であり、日本で最も汎用されている消炎鎮痛剤の一つ。ロキソプロフェンはプロドラッグであるため、NSAIDs特有の副作用である胃腸障害が現れにくいとされる。
アセトアミノフェン(別名:パラセタモール)
胃腸障害のリスクがNSAIDsと比べて低く、安全性が高いとして、単味製剤が妊婦、高齢者や小児の解熱鎮痛薬として用いられる。一方、効果はNSAIDsと比べてマイルドとされる。
アセチルサリチル酸(アスピリン)
シクロオキシゲナーゼ(COX)をアセチル化し、プロスタグランジン(PG)産生を抑制する。脳梗塞等の予防を目的とした抗血小板剤として低用量が処方されることもある。なお、アスピリンは元々バイエル社の商標。
イソプロピルアンチピリン
ピリン系の解熱鎮痛薬。ピリン疹等のアレルギー症状が出た人には禁忌である。また、ショック等の重大な副作用の懸念から、製造販売を禁止された国もある。
次回、(その2)でもう少し詳しくみていきます。
A4版は下のリンクから。PDFファイルが開きます。
市販の頭痛薬について調べてみた(その1)