くすり&健康WATCH

A4用紙1枚程度で示す、くすりや健康について調べた記録

脂質異常症とその原因ついて、調べてみた

診察イメージ

脂質異常症については、「脂質異常症のくすりについて調べてみた」で一度取り上げましたが、再度、より詳しく、より平易な表現でまとめてみようと思います。

脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロール(LDL-C)やトリグリセライド(中性脂肪:TG)が増加し、HDL-コレステロール(HDL-C)が減少した状態をいいます。血液中のLDL-Cが高くなると血管壁に取り込まれ、血管壁にアテローム状のプラーク(粥状の隆起)を形成して動脈硬化症の原因となることが知られています。脂質異常の状態が続くと動脈硬化が進み、動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳卒中など)の発症原因となります。

図:上絵は正常な血管。下絵は動脈硬化が進み、血管内壁にプラークを形成して血管が狭くなった状態。血管が詰まりやすく、心筋梗塞などの原因となる。(図:What Is Atherosclerosis? – National Institutes of Healthから)

動脈硬化

コレステロールとは何か?

「コレステロール値が高い=不健康」というイメージからコレステロールは悪者というイメージを持つかもしれませんが、コレステロールは細胞膜の構成成分であり、また、ホルモンや胆汁酸の原料となるなど、生命にとって必要不可欠な物資です。血中コレステロール値が高いと上述したように動脈硬化性疾患の原因となりますが、低い場合も健康への悪影響が指摘されており、がんとの関連や死亡率上昇などの報告があります。

コレステロールは食事から摂取されるだけでなく、体内(主に肝臓)で合成されます。むしろ体内合成量の方が多く、肝臓で合成されるコレステロール(内因性コレステロール)は体内全体の70~80%にもなります。一方、食事から摂取されるコレステロールは全体の20~30%です。なお、食事に含まれるコレステロールは平均50%程度(食物繊維があるともっと減る)であり、吸収されなかったコレステロールは糞として排泄されます。

コレステロールの体内での動き

コレステロールは、グルコースがグリコーゲンとして肝臓に蓄積されるような、体内で蓄積されるような形態への変化がありません。コレステロールは、血流に乗って体内を循環し、体中に届けられます。ただし、コレステロール(脂質)の形態では血液中に安定して存在できないため、アポタンパク質と結合したリポタンパク質(比重が低い順に、カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL)として血液循環しています。

LDL(低密度リポ蛋白)には、コレステロールを全身の細胞に輸送する役割があります。LDLは、LDL受容体に結合して末梢組織に取り込まれ、各細胞にコレステロールが供給されます。なお、参考までに、LDLの中に含まれるコレステロール(正確には、LDL中のコレステロールエステルと遊離型コレステロールをあわせたもの)をLDLコレステロール(LDL-C)と呼んでいます。

一方、HDL(高密度リポ蛋白)は細胞が使わずに余ったコレステロールを回収して肝臓に輸送する役割があります。HDLは、動脈硬化を起こした血管からもコレステロールを回収することができます。

不要となったコレステロールは、肝臓から胆汁酸として排泄されます。胆汁酸は、食事中のコレステロール吸収に関与しながら多くが肝臓に再吸収され、残りの胆汁酸は糞便中に排泄されます。

脂質異常症の分類・原因

脂質異常症には、主に、LDL受容体関連遺伝子の変異による遺伝性疾患である家族性の脂質異常症(家族性高コレステロール血症:FH)、食生活の乱れや運動不足など生活習慣による脂質異常症に分けることができます。FHは遺伝性疾患のため根本的な治療は困難ですが、遺伝性以外の原因で発症した脂質異常症は食生活の改善や運動習慣により改善されることがあります。

ヒトの体には体内コレステロール量の恒常性(ホメオスタシス)を保つために様々な調節機能があります。一例を挙げると、健常人がコレステロールを多く含む食事をすると、血中コレステロール濃度を一定の範囲内に維持するため、肝臓でのコレステロール合成が抑制されます。このような恒常性維持のための調整機能が破綻すると、脂質異常症が起こります。

調整機能が破綻する原因としては、コレステロールの多い食生活を続けることがあげられます(体内のコレステロールが増加してしまう)。また、運動不足や喫煙によりHDL-Cが減少することが分かっています。また、喫煙によりLDLが酸化するとLDL受容体への親和性が失われること、LDLが酸性変性すると動脈に沈着しやすくなると言われています。

細胞は必要以上にコレステロールを取り込まないこと、コレステロールは体内の組織で利用されないままに蓄積されないことから、血液中に存在する余剰分のコレステロールが増加することになります。血液中にLDL(LDL-C)が増加すれば、その一部が血管に沈着し、動脈硬化を起こしやすくなることは想像できると思います。

さらに、インスリン抵抗性がある高トリグリセライド血症(高TG血症)の患者では、LDLが小型化した sd LDL(スモールデンスLDL)が高頻度でみられますが、sd LDLはLDL受容体への親和性がなく(つまり末梢組織で利用できず)、小型なので血管壁に浸透しやすい悪質な因子であり、虚血性心疾患への関与が報告されています。

脂質異常症を改善するにはどうしたらよいのか

基本は、生活習慣の改善です。食事療法および運動療法を継続する必要があります。これらで改善しない場合や糖尿病などの動脈硬化危険因子のある場合は、薬物療法が必要です。食事療法および運動療法の例は、日本動脈硬化学会によると以下のようなものになります。

食事療法
食物繊維を多く含む麦飯、納豆、野菜、海藻、きのこなどを積極的に摂る。飽和脂肪酸(肉の脂身、ひき肉、バター、洋菓子など)やトランス脂肪酸が多い食品(マーガリン、洋菓子、スナック菓子)を控え、n-3系多価不飽和脂肪酸の多い青魚や、n-6系多価不飽和脂肪酸の多い大豆の摂取を増やす。コレステロールの多い食品(動物性のレバー、臓物類、卵類)を控える。トリグリセライド(中性脂肪)の高い人は糖質やアルコールを控える。肥満を解消・予防するために、摂取カロリーをコントロールする。

運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動を継続するとトリグリセライド(中性脂肪)の減少、HDL-Cの増加に効果がある。また、運動は肥満の予防や解消に役立つ。

さいごに

以上、A4サイズに治まる程度での脂質異常症とその原因ついて、調べたまとめでした。
あくまでも個人の勉強と理解ください。

A4版は下のリンクから。PDFファイルが開きます。
脂質異常症とその原因ついて、調べてみた

  • 管理人はこんな人

    こんにちは。
    私は、薬剤師の資格を持つ元製薬会社社員。退職後は医学論文の素案作成、そして資格や経歴と無関係の仕事を主にしてます。
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