くすりに関する配信ニュースを読む

2012年9月~の配信記事から

製薬業界の海外配信ニュースを中心として管理人が学んだこと、感じたことなど不定期にまとめたものです。(ニュースの翻訳ではないです)

新しい前立腺癌治療薬の承認 [2012/9/4管理人記載]

前立腺癌の新しい治療薬としてXtandiがFDAに承認されました。Xtandiは、アステラスと米国Medivation社の共同開発です。臨床試験において生存期間がプラセボの13.6ヵ月に対して、約5ヵ月間長い18.4ヵ月が示されました。価格は1ヵ月あたりUS$7,450(1US$=80円で計算して59万6000円)です。

[管理人のつぶやき] 生存期間18.4ヵ月の薬剤費を単純計算すると、18.4ヵ月間で1,096万6,400円、患者負担は高齢者で1割負担で109万6640円、保険(税金)から9割負担で986万9,760円。現役世代なら3割負担で328万9,920円の自己負担になる計算です。日本で発売された場合は同じ価格にならないと思いますが、高いですね。

情報源:New Drug For Prostate Cancer Gets F.D.A. Nod

Tevaのバイオシミラーtbo-filgrastimがFDA承認 [2012/9/4管理人記載]

Neupogen(Amgen)のバイオシミラーtbo-filgrastimがFDAに承認されました。承認申請時、米国ではバイオシミラーの承認審査制度が確立しておらず、バイオ新薬と同様の形式(BLA)での申請でした。

Watson Pharmaceuticals、Momenta PharmaceuticalsやBaxterは、バイオシミラー医薬品の承認申請に必要な臨床試験を最小限にするか無くすことをFDAに要求しています。バイオシミラー医薬品は、低分子化合物と異なり、先発のバイオ医薬品と製造工程が異なるため同質のタンパク質の製造は困難であり、先発品と同様の臨床試験が要求されています。

情報源:A Good Start On the Biosimilar Front

PfizerのCML治療薬が承認 [2012/9/5管理人記載]

PfizerのCML(慢性骨髄性白血病)治療薬BosulifがFADに承認されました。American Cancer Societyによれば、本年新たに5,400例がCMLと診断され、本年だけで610例が死亡しています。Bosulifは、2015年にはUS$171 millionの売り上げになると予想されています。

情報源:Pfizer Wins Approval for Drug to Treat Type of Leukemia

末期肺癌に対するAlimtaの生存期間延長は認められず [2012/9/8管理人記載]

Alimta併用治療は、非併用治療と比較して末期肺癌患者の生存期間を延長しませんでした。化学療法( carboplatin)+Avastin+Alimtaと化学療法+Avastinの生存期間は、12.6ヵ月と13.4ヵ月でした。

情報源:Alimta regimen didn't meet goal in study

特許切れによりSingulairの売り上げが大幅ダウン [2012/9/13 管理人記載]

気管支喘息とアレルギー性鼻炎治療薬のSingulair(Merck)の売り上げが、米国特許切れから4週間後には87%減少していることが公表されました。ちなみに、Singulairの2011年度の売上高は、US$ 5.5 billionになります。

情報源:Prescriptions for Merck's Singulair Plunge After Loss of U.S. Patent

OTC化すると広告から副作用情報が減る [2012/9/13管理人記載]

OTC販売された広告について調査したところ、有効性が強調される代わりに安全性情報が減っていることがわかりました。Claritin、Zyrtec、Xenical/Alli、PrilosecのOTC化された4剤の広告では、OCT化前は70%の広告で安全性情報が掲載されていたのに対して、OCT販売後は11%の広告にしか記載がありませんでした。この原因として、処方薬を監督するFDAは広告内容に有効性と安全性情報のバランスを要求していますが、OTC薬を監督するFederal Trade Commissionではそのような要求がないことが考えられます。研究チームは消費者に注意を促しています。

情報源:Ads lose balance when drugs become over-the-counter

魚油(フィッシュオイル)は心疾患予防効果がない [2012/9/13管理人記載]

過去24年間に実施された20試験から、魚油サプリメントを服用していた68,000例について調査したところ、心不全、脳卒中および死亡に対する抑制効果がないことが判明しました。この結果は、JAMA (Journal of the American Medical Association)に掲載されました。これまでの試験は魚油の心疾患に対する有用性を示すものでしたが、今回の結果は反対の見解を有するものです。

情報源:Fish Oil Pills Don’t Fix Heart Ills in 24-Year Data Review

薬剤費が家計を直撃している [2012/9/14管理人記載]

Alimta併用治療は、非併用治療と比較して末期肺癌患者の生存期間を延長しませんでした。化学療法( carboplatin)+Avastin+Alimtaと化学療法+Avastinの生存期間は、12.6ヵ月と13.4ヵ月でした。

情報源:Who Can Buy Drugs During A Sour Economy?

筋肉を冷やして火傷の恐れ [2012/9/15管理人記載]

OTCの痛み緩和薬が火傷を引き起こす可能性があるとFDAが警告しました。メンソール、サリチル酸メチルやカプサイシンを含む製品により1~3度の火傷を負った事例が報告されています。重症例では入院治療を必要としました。メンソールのみを含む製品で2~3度の火傷した例を含め、ここ数年で43件の報告がありますが、FDAは添付文書の改訂の要求はしていません。

情報源:FDA warns of burns from muscle and joint pain busters

ビッグファーマが共闘~臨床試験の効率化を目指して [2012/9/21管理人記載]

ビッグファーマ10社が臨床試験の合理化を目指した協力を始めました。メーカー間の協力は、それまでは競合しない範囲、例えばヒトゲノム情報の解読などでの協力はありましたが、今回の試みはそれを超えています。製薬企業は過去10年間は研究開発費用が急増した一方で、ブロックバスター薬の特許切れに伴う収益減少に面してきました。今回、 TransCelerate社は、臨床データの入力形式をメーカー間で統一することにより研究者のデータ入力を簡潔にします。それに加え、ネットを介して研究者同士での情報交換を行うことができ、メーカー側では実施施設や研究者の評価が可能となります。また、比較試験に用いる他社の対象薬の利用を助けます。この試みの発足時協力会社として、Abbott, AstraZeneca, Boehringer Ingelheim, Bristol-Myers Squibb, Eli Lilly, GlaxoSmithKline, Johnson & Johnson, Pfizer, Roche’s Genentech division, Sanoifが名を連ねています。

情報源:Drug Makers Join Efforts in Research

のべつない懐疑は医療発展の妨げ [2012/9/21管理人記載]

医師は製薬企業が実施する臨床試験結果について、質が高く、厳格に実施された場合でも信用しない傾向があると報告があります。想定されるバイアスは頭に入れておくべきですが、必要以上の懐疑によって新たな知見を受け入れなければ、医療の発展への障害となります。確かに過去には酷い不正もありましたが、ここ10年以上は各論文には資金提供等の情報開示がされています。

情報源:Doctors Biased Against Drug Company Research, Study Finds

心臓発作を起こした人はNSAIDs使用に要注意 [2012/9/24管理人記載]

IbuprofenやNaproxenは汎用されている消炎鎮痛薬ですが、心臓発作を過去に起こした人で心臓発作の再発や死亡率が高いことが示唆されました。心臓発作を初めて経験した約10,000例について5年間追跡調査したところ、心臓発作翌年の死亡率はNSAIDs服用例で約20%、未服用例で12%でした。その後4年間では死亡率は減少したものの、NSAIDs服用例での心臓発作の再発は未服用例の2倍近くになりました。心臓発作を経験した患者に対するNSAIDs投与は慎重に行う必要がありそうです。

情報源:After heart attacks, pain drugs' risks seem to last

1錠5¢の錠剤が新しい抗癌剤になるかも [2012/9/26管理人記載]

1958年に最初の承認を得た血糖硬化剤Metforminの各癌腫に対する試験(50試験)が世界中で実施されています。膵臓癌患者およびコントロール群(糖尿病患者を含む)を対象としてMetformin投与例と非投与例の膵臓癌発現例数を比較したところ、Metformin投与群の方が60%発現が少なかった研究結果がLi医師により2009年に論文発表されました。Metforminは既に特許切れした薬剤であり、製造メーカーであるBMS社は新規試験の実施に関心がなく、試験はカナダおよびアメリカ政府などの出資で行われています。

情報源:Five-Cent Diabetes Pill From 1958 May Be New Cancer Drug

参考文献:Antidiabetic therapies affect risk of pancreatic cancer. [PMID: 19375425 [PubMed - indexed for MEDLINE] PMCID: PMC2735093]

CT.govの管理をFDAへ [2012/9/26管理人記載]

CT.govの管理がHHSからFDAに移譲される。CT.govに試験登録しながら結果を報告していない試験が少なくなく、BMJによればCT.govに報告のない結果が論文に用いられていることがあるという。

情報源:FDA Gets New Authority Over Clinical Trial Reporting

血液検査で60分後に早期癌を発見 [2012/9/27管理人記載]

Kansas州立大学の研究者が血中の酵素活性を測定することにより早期癌を発見する検査方法を開発しました。ステージ0と1を含む乳癌患者20例とステージ1と2を含む肺癌患者12例の合計32例における的中率は95%であり、研究者は膵臓癌患者を対象とした試験を予定しています。

乳癌や肺癌は罹患率が高い癌ですが、発見時にはステージ2乳癌のように進行していることが少なくありません。今回の検査方法は、家族に癌を患った人やヘビースモーカーのようなリスクの高い人のスクリーニングに有効と考えられます。

情報源:Researchers Develop Blood Test That Accurately Detects Early Stages of Lung, Breast Cancer in Humans

 くすりの勉強について

周囲の親しい複数の知人たちが様々な病気を患っています。知人たちの病気を治す治療薬について情報を得たいと考え、細々と勉強を始めました。このため、私の勉強の中心は現在汎用されている薬に加え、臨床試験段階にある薬が中心です。

くすりに関する専門家向けまたは一般向けの情報は下記の類の本に委ね、私はネット経由で日々発信される最新情報を求めていきます。

今日の治療薬2012

くすりの事典―病院からもらった薬がよくわかる〈2012年版〉

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