肺癌の疫学と種類
疫学調査(がん情報サービス)によると、2007年における肺癌患者数は全癌腫の上位3番目以内にあり、日本人に多い癌です。また、将来推計データによると、2029年までに患者数がさらに増加するとが予想されています。
肺癌は、肺組織にできた癌です。これを病理組織学的に(顕微鏡所見から)分類すると、小細胞癌、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌の4つのタイプに分類されます。また、治療上の理由から肺癌を分類すると、小細胞癌と非小細胞癌(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌)の2つに分類されます。非小細胞肺癌が肺癌の約85%を占めます。
肺癌の臨床試験は、ほぼ100%が非小細胞肺癌が対象です。また、抗癌剤の臨床試験では非小細胞肺癌に対する治療効果を他の癌腫よりも早く検討する傾向があります。これは、肺癌患者数が多く、また増加傾向にあることから多くの患者さんを救いたいという企業理念に加え、市場規模の大きい疾患に優先的に新薬を投入したいという製薬会社の 開発 営業戦略によるものだと思います。
病理組織学的な特徴ってどんなの?
病理組織学的な特徴は、肺癌に特異なことではないですが、簡単にまとめます。
腺癌(adenocarcinoma)
唾液腺や乳腺のように、腺組織は体の中から分泌物を出すような組織形態をしています。この腺組織にできた癌が腺癌であり、主に体の中から分泌物を出す組織、つまり、胃、腸、子宮体部、肺、乳房、前立腺、肝臓等に発生します。腺癌は浸潤や転移しやすく、扁平上皮癌と比べて予後が悪い特徴があります。
扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)
扁平上皮は、体表面を覆う平たい形をした組織形態をしています。この平たい組織形態にできた癌が扁平上皮癌であり、主に皮膚や器官の粘膜の表面、例えば、口、喉、食道、子宮頸部、肺等に発生します。扁平上皮癌は、腺癌と比べて放射線療法が効きやすいとされます。肺癌では、喫煙男性に多く見られます。
大細胞癌(large cell carcinoma)
大細胞癌は、腺癌や扁平上皮癌のような組織形態的な特徴が認められず、さらに小細胞癌のように細胞が小さくないことが特徴です。もう一つの特徴は、未分化癌(⇒分化していない)であることです。大細胞癌の増殖は速く、発見時には大きな腫瘤であることが多いです。肺癌に占める割合は5%程度です。
小細胞癌(small cell carcinoma)
小細胞癌も未分化癌であり、腺癌や扁平組織癌のような組織形態的な特徴がありません。小細胞癌は、極めて悪性度が高く、発見時には既に、脳、リンパ節、肝臓、副腎、骨等に転移していることが多いです。一方、化学療法剤や放射線治療の効果が高いとされます。
肺癌の治療は、上に書きました組織型に加え、病期(癌の広がりを含む)によって変わってきます。どのような治療方法があるのか、(くすりの勉強ですので)くすりを中心に次のページで勉強したいと思います。
参考にしたサイト
- がん情報サービス
- がん情報サイト
- がんサポート情報センター
作成日:2012年10月29日 | ページ更新日(最新):
周囲の親しい複数の知人たちが様々な病気を患っています。知人たちの病気を治す治療薬について情報を得たいと考え、細々と勉強を始めました。このため、私の勉強の中心は現在汎用されている薬に加え、臨床試験段階にある薬が中心です。
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