甲状腺機能低下症と関節リウマチ

関節リウマチのリスクファクターか?

甲状腺機能低下症は関節リウマチのリスクファクターなのか調べました。

今回調べた背景−医者のひとこと

「甲状腺機能低下症で病院を受診したら、『将来、リウマチになる可能性がある』と言われちゃった。本当なのかなぁ...」

こんな質問を受けました。質問者は不安そうでしたので、ちょっと調べてみることにしました。なお、私は専門家ではないですし、調べる範囲はネット検索して無料で入手できる範囲の情報です。

甲状腺機能低下症は関節リウマチのリスクファクターか?

結論から書きますと、甲状腺機能低下症が関節リウマチを誘因すると明記された文献やサイトを見つけることができませんでした。甲状腺機能低下症は関節リウマチの危険因子であるとある日本人医師が記載しているサイトがありましたが、私は裏付けとなる情報は見つけることができませんでした。

一方、関節リウマチ患者では、関節リウマチでない人と比べて甲状腺機能低下症を併発している割合が高いことが複数の文献で報告されています。ただし、関節リウマチ→甲状腺機能低下症の順なのか、甲状腺機能低下症→関節リウマチの順なのか、またはどちらも起こりうるのかについて情報を探し当てることができませんでした。

なお、最近の論文では、甲状腺機能低下症を併発している関節リウマチ患者に心血管障害の発症例が多いこと、心血管障害を予防することについて関心が高いようです。

ネットで調べたことのまとめ

ネット検索で見つけた関連情報をまとめると下図のようになりました。図の下には、図の作成にあたり参考とした情報を示しています。

甲状腺機能低下症と関節リウマチとの関係について調べた結果のまとめ

  1. 甲状腺機能低下症(メルクマニュアル)
  2. 甲状腺機能低下症の診断ガイドライン(日本甲状腺学会)
  3. 合併症妊娠の管理と治療
  4. 一般不妊治療・ARTの基礎知識(聖路加国際病院産婦人科・生殖医療センター 佐藤孝道先生)
  5. Rheumatoid arthritis - Risk Factors(University of Maryland Medical Center)
  6. Rheumatoid Arthritis(American College of Rheumatology)
  7. Thyroid dysfunction in rheumatoid arthritis: a controlled prospective survey.(J B Shirokyら. Ann Rheum Dis. 1993)
  8. Prevalence of thyroid abnormalities in patients with rheumatoid arthritis.(Caron Pら. Thyroidology. 1992)

日本では、妊娠時の検査や不妊治療の検査において甲状腺ホルモン値(TSH)を調べることが多いようです。TSHが異常値であれば、遊離T4を検査します。検査を行う目的は、不妊治療や妊婦では胎児への影響を最小限にするよう治療(甲状腺ホルモンの補充)するためだと理解しました。

甲状腺機能低下症が関節リウマチの直接的な原因の一つであるとする文献や情報は見つかりませんでしたが、少なくとも関節リウマチ患者において甲状腺機能低下症の併発が多いことは確かですので、合成T4製剤(チラーヂンSR)を服用しておくことが求められるでしょう。

[お断り] 当ページは、医学専門家ではない管理人個人の勉強ノートを公開したに過ぎません。従いまして、甲状腺機能低下症について詳しく知りたい方は、専門書あるいは詳しい情報サイトをご覧ください。

作成日:2012年12月10日 | ページ更新日(最新):

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