元製薬会社社員のひとりごと

[第5回]悪い病院は受診したくない

くすりに関することについて、思いついたことを思うままに書きます。⇒第5回もくすりというよりも病院選びに関することです。

悪い病院は、ほとんど存在しません。

ひとりごと第5回目の表題を始めから否定しました。何かを期待された方、すいません。私の考えるところの悪い病院とは、奈良県大和市の山本病院のように、不要な検査や治療を繰り返し、挙句に果てには不要な手術まで行い患者を死亡させるような病院です(ご存じない方はWikipediaの山本病院事件が参考になるかもです)。病院や診療所は患者さんを治すことで社会に大きく貢献しています。

ですが、残念なことに、不要な検査や治療を行う病院もあることは事実です。

不要な検査や治療について、私が経験したことを書きます。下の事例はすべて私が社会人になった後に経験したことです。つまり、私の保険証から、医師や病院は私の勤め先が製薬会社(一般の方より少しは検査や治療について詳しい)と知っていた上での経験でした。これらの病院へは、その後は一度も受診したことがありません。つまり、身をもって体験して判断した”私にとって”悪い病院だったのです。

[経験1] A病院:喉に違和感を覚えて耳鼻咽頭科専門病院を受診したところ、喉には問題ないが鼻に少し炎症があると吸引治療を強要されました(私は鼻に何の症状もありませんでした)。診察は流れ作業で詳しい説明なし。その病院では、来院患者すべてに順番で同じ機器を用いた吸引をさせていました(これも流れ作業)。通院指示と処方箋を受け取りましたが、薬局に立ち寄ることもしなかったです。(私は薬剤師免許があり、その知識を基に自己責任で判断しました)

[経験2] 高熱が出たため、検査と解熱鎮痛薬の処方を求めて病院を受診したところ「これから薬を静注します」と言われ、薬剤名と成分を尋ねると「体を丈夫にするお薬です」とだけ看護師が説明され、それ以上は質問しても答えてくれえませんでした。かえって感染症を引き起こす原因ともなるような治療(静注)に驚き、また症状が改善したかったため翌日別の病院を受診しました。別の病院の医師曰く「私にも静注する意味が分かりません。何を静注したか検討がつかないし、静注行為自体リスクの方が高すぎます」。

[経験3] 会社で発熱して帰宅途中にある病院を(翌日に重要な出張があるので治したい)受診したところ「尿検査するのでお小水を取ってください」と指示がありました。しばらく待って呼ばれた診察は1~2分程度で「風邪薬を出しておきます」との説明。薬はなんと薬剤師でなく病院事務員が説明した上で渡されました。その際、尿検査の目的を聞いたところ「蛋白や糖を検査した」との事務員の説明でした。尿蛋白や尿糖は風邪をひくと出やすいのは確かですが、その診断のために尿検査を?と不要な検査をされた気分でした。なお、処方された薬は消炎鎮痛剤、抗生物質および2種類の胃薬(胃粘膜保護剤)でした。

ちょっとだけ、くすりの知識を交えます。

抗生物質ですが、風邪の原因の大半はウイルスですので基本的効きません。また、重症化して肺炎の予防にと説明される場合があるかもしれないですが、予防効果は期待できません。風邪に対する抗生物質の処方は「抗生剤適正使用のガイドライン」で推奨されていないはずです。また、胃粘膜保護剤は消炎鎮痛剤の予防を目的(名目)に慣例的に処方されますが、効くというエビデンスはないはずです。しかも2種類も処方とは...。私が受診した別の病院(現在のかかりつけ医)では「消炎鎮痛剤出すけど胃粘膜保護剤も要る?」と聞いてくれます。「胃を悪くしたことがないので要らないです」と答えています。

私の体験例のように、街中の病院でも診療報酬稼ぎとして不要な検査や治療を行っている病院が少なくないと想像しています。上に3例記しましたが、同様の経験はまだまだ他にもあります。何度も引っ越しをしてきたので...。このような事例は当局も承知しており、診療報酬の不正請求の調査を毎年実施していますが、医師が必要と判断した検査や治療は医師の裁量として認められており、山本病院のようによほどの悪性がない限り大きな問題として取り上げられることはありません。街中の病院は患者を治療して地域医療に貢献しているからです。悪い病院は、ほとんど存在しません。

私たちが病院を受診した際は、不要な検査や治療に対して「No」と言えることが大切だと思います。「No」を受け入れない病院を最初から避けて受診しないようにする情報や方法はありませんが、次に病院にかかる際は、そのような病院を避け、に自分に合う病院を探すことはできます。

一方では、私を含め、軽度な患者が病院を受診することが医師への負担増につながっています。次回は、このことを含め、病院選びという観点からひとりごとしたいと思います。

Copyright (C) ふつおの休日 All rights reserved.