元製薬会社社員のひとりごと

[第6回]FDAの新しいプログラム

今回は、FDAの「Breakthrough Therapy(画期的な治療法)」制度についてです。

Palbociclibが“breakthrough therapy(画期的な治療薬)”の指定を受けた

配信記事「Pfizer cancer drug wins special status; shares jump」からです。

アメリカ規制当局は、乳癌治療薬として開発中のファイザー社のpalbociclibに“breakthrough therapy(画期的な治療薬)”の指定をしました。指定に伴いJPモルガンは、乳癌および他の癌腫に対する適応取得後のpalbociclibのピーク年間売上をUS$5 billion(約5000億円;US$1=100円で計算)と予測しています。

FDAは今年初めに“breakthrough therapy(画期的な治療薬)”の指定制度を設けました。既存薬と比べて実質的な改善を示すことが期待される開発薬がこの指定を受けることができます。画期的な新薬の迅速な開発と承認審査を目的とするものです。

Palbociclibは、進行再発乳癌のファーストラインとして、レトロゾール(アロマターゼ阻害薬)と併用した第3相試験を現在実施中です。Palbociclibとレトロゾールの併用投与とレトロゾール単独投与を比較した第2相試験の中間解析結果が発表されており、無増悪生存期間(PFS)が併用群26.1ヵ月、単独群7.5ヵ月と、併用群で有意なPFSの延長が認められています。

この記事のBreakthrough Therapyについて耳にしたことがなかったため、調べてみました。

背景情報

FDAは何年も前から生命を脅かす疾患に用いる治療薬の開発と審査の迅速化のプログラムを実行してきました。優先審査、先行調査、迅速審査などがその例です。安全性と有効性に優れた新たな治療方法を必要とし、生命を脅かす疾患に罹った患者に対して既存薬を大きく改善する潜在性のある新薬開発を迅速化するプログラムを設立しました。

2012年7月9日に大統領の署名を受けて成立したFood and Drug Administration Safety and Innovation Act (FDASIA)の第9節には、製薬企業からの”Breakthrough Therapy(画期的な治療薬)”指定への要求を認める条項が含まれています。

“Breakthrough Therapy Designation(画期的な治療薬の指定)”とは

Breakthrough Therapyは、FDASIAの中で以下のように定義されています。

Breakthrough Therapyとは、単剤または他剤と併用することにより、重篤または生命を脅かす疾患または状態の治療を目的とした薬剤。さらに、例えば先に実施した臨床試験で実質的な治療効果が確認されているように、1つまたは複数のエンドポイントで既存薬よりも著しい改善が期待される予備臨床データを有する薬剤。

参考:Food and Drug Administration Safety and Innovation Act (FDASIA)
参考:Breakthrough Therapies(FDA/CDER)
参考:FDA安全及びイノベーション法(PMDA日下部氏報告書)
参考:Fact Sheet: Breakthrough Therapies(FDA)

それで、どのくらいの数の薬剤がBreakthrough Therapyの指定を受けているかですが、2013年3月末日時点で下のようになっています。指定された治験薬数は合計10、否定された治験薬数は11となっています。否定された治験薬も結構あるんですね。

Breakthrough Therapies(画期的な治療薬)

指定された薬剤には、Palbociclib(ファイザー)の他に、Ibrutinib(J&J)、LDK378(ノバルティス)などがあります。

参考:Frequently Asked Questions: Breakthrough Therapies

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