くすりに関する配信ニュースを読む

2011年8月~の配信記事から

製薬業界の海外配信ニュースを中心として管理人が学んだこと、感じたことなどまとめたものです。(ニュースの翻訳ではないです)

[第1回] 2011.8.1の週の配信情報1
ファイザーは、LipitorのOTC化を検討している

ファイザーは、atorvastatin (Lipitor)のOTC薬としての承認獲得を検討している。FDAは過去に他のスタチン(lovastatin)のOTC薬申請に対して承認を与えなかった。

LipitorがOTC薬として承認される保証はないが、消費者が正しく使用するための方策を企業が提示することができるのであれば、スタチンのOTC化について検討するとFDAスポークスマンは話している。

情報源:Pfizer Wants to Market OTC Atorvastatin (Lipitor)

関連情報:Over-the-Counter Sales of Statins and Other Drugs for Asymptomatic Conditions

[第2回] 2011.8.1の週の配信情報2
ベーリンガーは、欧州でPradaxaの承認を取得した

ベーリンガーは、欧州におけるpradaxaの承認を取得した。競合薬のEliquis(ブリストール・マイヤーズ、ファイザー)やXarelto(バイエル、J&J)に先んじての欧州承認となった。

数十年ぶりの脳卒中発症抑制の適応を持つ薬剤であり、ワルファリンにとって代わると考えられる。

情報源:Bayer rival Boehringer gets EU nod for Pradaxa pill

[第3回] 2011.8.8の週の配信情報1
アクトスに対する訴訟が急増する

FDA及びEMEAは、アクトス(ピオグリタゾン)の1年以上の服用により膀胱癌のリスクを高める可能性があると警告している。また、フランス及びドイツでは当局の指導により販売中止している。

ある弁護士は、104クライアントから120の訴訟を予定しており、30~40訴訟/週の割合で増えるだろうとしている。全米で数千件もの訴訟に発展する可能性もある。

武田薬品は訴訟に対するコメントを発表していないが、今後もアクトスを必要とする患者に提供していくと声明を出している。

情報源:Lawsuits follow diabetes drug link to cancer risk

関連情報:FDA Drug Safety Communication: Update to ongoing safety review of Actos (pioglitazone) and increased risk of bladder cancer

[第4回] 2011.8.8の週の配信情報2
C型肝炎ワクチン開発への一歩

C型肝炎には全世界で1億3千万~1億7千万人もの患者がおり、毎年35万人がC型肝炎のために亡くなるといわれるが、ワクチンが存在しない。

フランスの科学者が、マウス及びサルを用いたワクチンの試験で良好な成績を収めた。このワクチンはウイルス様粒子を用いて作ったが、増殖の遺伝物質は含まないと言う。

今後、臨床試験に移行する予定。

情報源:Scientists a step closer to Hepatitis C vaccine

関連情報:A prime-boost strategy using virus-like particles pseudotyped for HCV proteins triggers broadly neutralizing antibodies in macaques. Sci Transl Med. 2011 Aug 3;3(94):94ra71. [PubMed(PMID: 21813755)]

[第5回] 2011.8.15の週の配信情報1
増大する抗うつ薬の処方

精神科専門外の医師による抗うつ薬の処方が増加している。このような事例では、気分高揚や睡眠改善という目的で処方されているが、抗うつ薬がこれらに効くという根拠はない。

抗うつ薬の市場は2010年には$11.6 billion(IMS Health)と成長し、処方数は抗コレステロール薬に次ぐ254 millionとなっている。

この発表をした研究者たちは、不適切な処方により、患者が適切な診断と治療を受けていない可能性を危惧しており、精神障害と治療薬、治療薬の適切な使用方法について医師に教育すべきであるとしている。

情報源:The Dark Cloud Over Growing Antidepressant Prescriptions

関連情報:Americans' Use of Antidepressants On the Rise: Study

[第6回] 2011.8.15の週の配信情報2
2010年の医家向け医薬品売上げ上位50社

HP管理者コメント:1位は断トツでファイザー、日本企業では15位に武田薬品が入っています。各社主力製品の特許切れでこの勢力図がどのように変わるのか?

2010年の医家向け医薬品売上げ上位50社は、上の情報源のURLで確認ください。

情報源:The 50 Largest Pharmaceutical Companies by Sales

[第7回] 2011.8.15の週の配信情報3
心血管イベントの予測:冠動脈カルシウム>CRP?

Jupiter試験と同じ対象集団950例を対象とした5.8年(中間値)のMESA試験の結果、低LDLコレステロール値及び高CRP値の患者では、冠動脈カルシウム(CAC)値がスタチンによる心血管イベント防止効果を予測することが示唆された。一方、CRP >2 mg/Lはスタチン投与の恩恵を受ける集団を特定することができなかった。

この試験結果は、これまでのCACがCRPよりも有用な指標であるとの報告と一致し、さらにコレステロール値が正常である患者にも有用であることを示唆するものである。この研究結果は、恩恵を受ける対象患者を絞り込むことにより、心血管イベントをこれまでと同じように予防しながら医療費削減に寄与するだろう。

情報源:Is Coronary Calcium Better Than CRP for Predicting CV Events?

関連情報:Associations between C-reactive protein, coronary artery calcium, and cardiovascular events: implications for the JUPITER population from MESA, a population-based cohort study

[第8回] 2011.8.22の週の配信情報1
抗癌剤の高い治療費は適正なの?

ホジキンリンパ腫及びALCL治療薬のAdcetrisは、$1 billionを超える開発費と年月をかけて開発された。この投資回収のため、治療費は患者1人当たり$120,000にもなる。Adcetrisは既存薬が無効の患者を対象とするが、対象患者数の大小に関係なく開発費は同等に必要であること、またAdcetrisの新規性及び開発投資を考えると妥当な治療費であると考えられる。他の新しい抗癌剤では平均$100,000/年の治療費になるといわれる。

情報源:What's a Cancer Drug Worth?

関連情報:

Hodgkin’s Lymphoma And A High-Priced Drug

[第9回] 2011.8.22の週の配信情報2
食事でLDLコレステロール値を管理

351例のコレステロール値の高いカナダ人を3群に分け、6ヶ月間に1群は低脂肪食、他の2群は動物性食品を避けて菜食とし、かつ期間中に低コレステロール食(豆乳、豆腐、種実類、オート麦、豆類)をそれぞれ2回、7回採った。服用していた抗高脂血症薬は試験開始にあたり中止した。

その結果、低脂肪食群ではLDLコレステロール値が8mg/dL減少し、他の2群では開始時平均170mg/dLから24mg/dL及び26mg/dL減少した。

食事を変えることのできる人には食事療法が選択肢の一つだが、食事を変えたくない人はスタチンの服用が望ましい。LDLコレステロール値が極めて高い患者や、家族性高コレステロール血症患者には食事療法は不可欠である。

情報源:Diet alone helps lower bad cholesterol: study

[第10回] 2011.8.29の週の配信情報1
FDAがXalkoriを承認

FDAは、ALK遺伝子陽性の後期(局所進行性または転移性)NSCLC患者に対す治療薬としてXalkoriを承認した。

Xalkoriは、Vysis ALK Break Apart FISH Probe Kit ALKと称する遺伝子陽性判定のコンパニオン診断薬とともに承認された。このような標的治療薬のFDA承認は今年2件目である。

情報源:FDA approves Xalkori with companion diagnostic for a type of late-stage lung cancer

関連情報:Pfizer Wins U.S. Approval for Lung Cancer Drug Seen as Filling Lipitor Gap

[第11回] 2011.8.29の週の配信情報2
遺伝子組換えウイルスが腫瘍選択性を示した

初期試験において、JX-954(Jennerex)が腫瘍に感染したこと、軽度かつ一過性の副作用だったことがNatureに発表された。

23例の進行癌患者を対象としてJX-954の安全性を検討した試験において、上から2用量の投与を受けた8例のうち6例において腫瘍が安定(stable)または縮小した。 うち、7例(87%)で腫瘍細胞においてウイルスの増殖を確認したが、正常細胞では認められなかった。

肝細胞癌を対象とした別の初期試験では、JX-954は強い作用を示した。B型肝炎ウイルスのようなウイルス起因の肝細胞癌では、ウイルス療法への感受性がより高いと考えられた。

JX-954は、子どもの天然痘ワクチンに用いる株から作製している。遺伝子変異に必要な情報は取り除かれている。Jennerexのウイルス療法は静脈内投与され体中を循環することから、癌細胞の転移や進展を抑えることができる。

その他の癌ウイルス療法は、腫瘍組織への直接注射または化学療法との併用が必要である。OncoVex(Amgen)の悪性黒色腫を対象とした第3相試験の結果は来年明らになる。Reolysin(Oncolytics Biotech)は、頭頸部癌を対象として、化学療法剤との併用療法のpivotal試験を実施中である。

なお、JX-954は米国及び日本にはライセンスされていない。

情報源:Cancer-fighting virus shown to target tumors alone

 くすりの勉強について

周囲の親しい複数の知人たちが様々な病気を患っています。知人たちの病気を治す治療薬について情報を得たいと考え、細々と勉強を始めました。このため、私の勉強の中心は現在汎用されている薬に加え、臨床試験段階にある薬が中心です。

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今日の治療薬2012

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