くすりに関する配信ニュースを読む

2012年7月~の配信記事から

製薬業界の海外配信ニュースを中心として管理人が学んだこと、感じたことなど不定期にまとめたものです。(ニュースの翻訳ではないです)

大企業2社が自社よりも小さい企業を共同買収する? [2012/7/2管理人記載]

BMSとAZの2社が共同してAmylin Pharmaceuticals, Incの買収を画策しています。Amylinの製品は糖尿病治療薬ByettaやBydureonがあります。両社は糖尿病治療薬であるOnglyzaおよびKombiglyze を共同販売しており、dapagliflozinを共同開発するなど協力関係を築いています。年初に期待していたdapagliflozinのFDA承認が得られず、追加臨床データの提出を要求されたことから、両社が糖尿病治療薬の充実を図るものと考えられます。ByettaはGLP-1受容体作動薬の先駆けであり、Bydureonはその長期作用型です。Bydureonは安全性面での検討に時間を要して承認までに時間を要していました。

情報源:Why Bristol And Astra Teamed Up To Buy Amylin In Unique $7 Billion Deal

BMSがAZを買収する? [2012/7/6管理人記載]

「AZ買収?」は記事のタイトルではなく文中で触れている程度ですが、おもしろそうなので追記しました。BMSはターゲット領域を癌、C型肝炎、リウマチに絞ったにもかかわらずAmylinを買収して糖尿病治療薬を得ようとするのはAZを買収したいからという記者の読みです。ちなみに、記事はForebsのサイトからです。

情報源:Expert On The Amylin Purchase: 'I Hate This Deal'

家庭用HIV検査キット承認 [2012/7/6管理人記載]

医療機関や検査機関を通すことなく家庭でHIV感染を検査できる最初の簡易検査キット(OraSure Technologies Inc.)がFDAに承認されました。規制当局は、陽性反応が出た場合は99%以上の検査精度を有する医療機関や検査機関で確認するよう促しています。CDCによれば、米国で50,000人/年が新たにAIDSを発症し、2008年には16,000人がAIDSで亡くなっています。米国人120万人がHIVに感染していると考えられており、その20%が感染に気付いていません。つまり、HIV感染が疑われながら検査を受けていない人が約25万人いるといわれています。

情報源:OraSure Wins U.S. FDA Approval for First At-Home HIV Test

GLP-1製剤の市場獲得への熱いバトル [2012/7/13管理人記載]

lixisenatide(Sanofi):38ヶ国、400施設、4300例を対象とした第V相試験10試験で良好な結果が得られている。先行するGP-1製剤、exenatide(Byetta)やliraglutide(Victoza)に対して良好な血糖値管理と体重減少で差別化を図るほか、単剤での治療およびLantus(長時間型インスリン製剤)との併用という治療選択肢を持つことを目指している。[情報源:Lixisenatide: Combination Treatment Could Offer Differentiated GLP-1 Advantage to Diabetics]

albiglutide(Glaxo):Glaxoは、実施中の1試験でalbiglutideの有用性を示し、来年早々の承認取得を目指している。承認されれば、Amylin Pharmaceuticals Inc.のByettaやNovo Nordisk A/SのVictoza、そして開発中の他の薬剤との競合状態になる。[情報源:Glaxo to Seek Approval of Albiglutide for Diabetes in Early 2013]

ドラッグラグは日本だけではない [2012/7/13管理人記載]

米国では欧州と比べて2000年から2011年の期間に33%多くの抗癌剤が承認されています(米国:40、欧州30)。理由として、FDAが迅速な審査を実施していることに加え、各製薬企業が米国市場を最初のターゲットとしていることが考えられます。例をあげると、Gleevecの承認は米国と比べて欧州で11ヵ月遅く、米国で承認されている前立腺癌治療薬Provengや非小細胞肺癌治療薬Xalkoriは欧州で承認されていません。

一方、抗癌剤の価格は欧州の方が平均で約9%安く、また米国人患者は抗癌剤治療に多くの費用負担をしています。また、治療選択肢の多さが治療成績の向上に結び付いているかどうかは明らかではありません。 慢性リンパ性白血病治療薬Campathの薬価は米国で$1790ですが、医療経済的指標を重視している欧州では$570です。大腸癌治療薬Erbituxは米国で$1060、欧州で$466です。

ただし、最近の新薬では必ずしもこの傾向ではないようです。悪性黒色腫治療薬Yervoyは欧米ともに$23,800、Zevalinでは米国$2,800に対して欧州$4,600と逆転もみられます。

情報源:U.S. Patients Get Access To More Cancer Drugs, But Pay For The Privilege

情報源:U.S. Cancer Patients Get Faster Access to More Oncology Drugs than European Patients

GloxoがHuman Genome Sciencesを買収 [2012/7/17管理人記載]

GloaxoはHuman Genome Sciencesを一株あたり$14.25で買収することで合意した。この額は、GlacoがHuman Genome Sciences買収提案前の4/18の株価と比べて99%高額です。

Human Genomu Sciences社の主力製品には、SLE治療薬Benlystaおよび動脈硬化性疾患の治療薬として開発しているdarapladibがあります。また、糖尿病治療薬として開発中ののalbiglutideは、exenatide (Byetta)やliraglutide (Victoza)と同じクラスのGLP-1製剤です。これらは、Human Genomu SciencesとGloaxoで創薬・開発されています。

情報源:GSK bolsters medicine chest with biotechnology buy

PCSK9阻害薬~動脈硬化症に対する新たな武器か [2012/7/23管理人記載]

RocheのPCSK9阻害薬RG7652が来年には第3相試験に入る計画であることがわかりました。RG7652は現在第2相試験の患者登録中であり、同じくPCSK9阻害薬であるREGN727(Sanofi)よりも約12~15ヵ月遅れ、AMG145(Amgen)よりも9~12ヵ月遅れています。REGN727は、20,000例以上を対象とした第3相試験を実施中であり、Sanofiは2015年までの承認を目指しています。

[管理人のつぶやき] 動脈硬化症に対する治療はスタチンが標準薬ですが、PCSK9(Pro-protein Convertase Subtilisin Kexin 9)阻害薬の差別点について考えてみました。PCSK9はLDL-C受容体を分解するため、LDL-Cが細胞に取り込まれず血中LDL-Cが増加しますが、PCSK9阻害によりLDL-C受容体を増やしてLDL-Cの体内取り込みを増やすことにより、他のコレステロール値に影響することなく血中LDL-Cを特異的に下げます。

また、スタチンはHMG-CoA還元酵素阻害により肝臓内コレステロール生合成を低下させ、コレステロール恒常性維持のためLDL-C受容体発現が上昇し、LDL-C取り込みを促進させます。HMG-CoA 還元酵素は、PCSK9とともに転写因子SREBP-2により制御されていますが、肝臓内LDL-Cが減少するとSREBP-2 が働きだします。 その結果LDL-C受容体とPCSK9が同時に発現します。つまり、スタチンはPCSK9の活性化にも作用することにより自らの効果減弱をしている可能性があります。PCSK9は、スタチンのこの欠点を補うことが期待されます。

情報源:Roche’s Secret Heart Drug Moves Toward Late-Stage Trial

情報源:Sanofi eyes 2015 launch of cholesterol drug

情報源:Amgen's PCSK9 Inhibitor Reduced LDL Cholesterol up to 81 Percent in Phase 1b Study Robust AMG 145 Phase 2 Program Expected to Deliver Results in 2012

Afinitorが乳癌の適用を取得 [2012/7/24管理人記載]

BMSのAfinitorの乳癌の適応がFDAに承認されました。Afinitorは、腎癌を初めとして5つの適応症が承認されたことになります。AfinitorはmTOR阻害薬として最初に乳癌の適応を取得した薬剤となりました。

情報源:FDA Approves Novartis's Afinitor for Advanced Breast Cancer

FDA審査結果待ちの開発品(2012.7.26~2013.2) [2012/7/25管理人記載]

現在(2012/7/24)から2013年2月までの間にFDA審査結果待ちの開発品のリストです。向こう6~7ヵ月間という短い期間ですが、big pharmaの開発品は想像よりも少なく、また日本の製薬会社はアステラス1社のみがリストに含まれています。備考に記載した国内の開発状況ですが、薬剤名とjapanをCT.govの検索に放り込んだ結果ですので実際にはもっと多い可能性がありますが、この結果のままなら日本での開発は半数以下と少ないです。

情報源:28 Drugs Facing FDA Approval in 2012-2013

薬剤名適応開発会社 審査結果備考
Vascepatriglyceride reductionAmarinJuly 26
Lodotra rheumatoid arthritis painHorizon PharmaceuticalsJuly 26
Relistor SC opioid-induced constipationSalix Pharmaceuticals, ProgenicsJuly 27適応拡大
Arcalystprevention of gout flaresRegeneron PharmaceuticalsJuly 30適応拡大
Zaltrapcolon cancerRegeneron Pharmaceuticals、Sanofi Aug. 4国内P1/2(NCT00921661
Marqiboadvanced acute lymphoblastic leukemiaTalon TherapeuticsAug. 12FDA advisory panel recommend approval
QuadHIVGilead SciencesAug. 27
Tofacitinibrheumatoid arthritisPfizerAugust国内P3(NCT01276639)
Linaclotidechronic idiopathic constipation and irritable bowel syndromeIronwood PharmaceuticalsSept. 8国内P1(NCT01427387
Lymphoseeklymph node mappingNavidea BiopharmaceuticalsSept. 10
EyleaRetinal Vein Occlusion Regeneron PharmaceuticalsSept. 21国内P3(NCT01012973
Gattexshort bowel syndromeNPS PharmaceuticalsSept. 28
Aubagiomultiple sclerosisSanofi3Q
Abraxanenon-small cell lung cancerCelgeneOct. 12適応拡大(国内申請中)
IPX066Parkinson's diseaseImpax LabsOct. 19国内P2(NCT01479127
Oral Remodulinpulmonary arterial hypertensionUnited TherapeuticsOct. 26
LixivaptanhyponatremiaCornerstone TherapeuticsOct. 29
MDV3100prostate cancerMedivation, AstellasNov. 21国内P3(NCT01212991
Cabozantinibmedullary thyroid cancerExelixisNov. 30国内P1(NCT01553656
Adasuveagitation due to schizophreniaAlexza PharmaceuticalsDec. 21
Lomitapidedyslipidemia/ hypercholesterolemiaAegerion PharmaceuticalsDec. 28
BG-12multiple sclerosisBiogen IdecDec. 28
ZelrixmigraineNuPatheJan. 16
KynamrohypercholesterolemiaSanofi, Isis PharmaceuticalsJan. 29
RP103cystinosisRaptor PharmaceuticalJan. 30
Pomalidomidemultiple myelomaCelgeneFeb. 10国内P3(NCT01178281
Heplisavhepatitis B preventionDynavaxFeb. 24

 くすりの勉強について

周囲の親しい複数の知人たちが様々な病気を患っています。知人たちの病気を治す治療薬について情報を得たいと考え、細々と勉強を始めました。このため、私の勉強の中心は現在汎用されている薬に加え、臨床試験段階にある薬が中心です。

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今日の治療薬2012

くすりの事典―病院からもらった薬がよくわかる〈2012年版〉

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