健康食品&サプリメントWATCH

A4用紙1枚程度で示す、健康食品やサプリメントについて調べた記録

機能性表示食品 アラプラス糖ダウンの機能について調べてみた

血糖値イメージ

基本情報

アラプラス糖ダウンは、「高めの空腹時血糖値を正常に近づけることをサポート」等の保健の目的が期待できるとして消費者庁に届出された機能性表示食品です。

機能性関与成分:
5-アミノレブリン酸リン酸塩
届出表示:
本品は5-アミノレブリン酸リン酸塩を含み、高めの空腹時血糖値を正常に近づけることをサポートし、食後血糖値の上昇を穏やかにする機能があります。血糖値が高めの方に適しています。
主な対象者:
血糖値が気になる方
届出番号:
A148

アラプラス糖ダウンがどのように働くのか(作用機序)

作用機序

届出資料にある作用機序の説明を短く書くと以下のようなものかと思いますが、よく分かりません。

『5-アミノレブリン酸(ALA)は鉄と結合してヘムを生成する。ヘムを構成要素とするシトクロムはミトコンドリア内の電子伝達系で中核となるが、加齢とともにシトクロム合成量と電子伝達系の活動が衰え、また、ヘム欠乏症の症状が老化の症状と似ていることから、ALAの摂取が加齢によって減弱した細胞の活性に有効である。

体内に吸収されたALAの糖代謝への作用機序は完全は解明されていないが、ALAの摂取によるシトクロム c オキシダーゼ活性の上昇が関与していると推察され、ALAの経口摂取により耐糖能異常が改善したことが複数の臨床試験で示されている。』

私の想像ですが…。ミトコンドリアの機能が低下したミトコンドリア病患者(難病指定)でインスリン分泌が低下して糖尿病を発病した報告があり、また、膵β細胞のミトコンドリアの機能低下によりインスリン分泌能が低下した報告があります。これらを意識しているのかと(ALAの糖代謝作用機序は解明されていないようです)。

機能性の科学的根拠(エビデンス)

機能性食品としての届出の際、機能性の科学的根拠の提示が求められています。アラプラス 糖ダウンでは、最終製品を用いて実施した臨床試験の結果を示しています。

被験者:
成人の軽度高血糖者(空腹時血糖値105~125mg/dLまたはHbA1c値6.1%~7.1%)
方法:
212例をプラセボ群、ALA 5mg+鉄0.6mg、ALA 5mg+鉄1.8mg、ALA 15mg+鉄1.8mg)いずれかに無作為割付して3ヵ月摂取させ、耐糖能(OGTT)、体脂肪率、HbA1c、インスリン抵抗性(HOMA-IR)等を評価
結果:
ALA と鉄の摂取により、空腹時血糖の有意な改善が認められた。ブドウ糖負荷試験 2時間値においても、ALA と鉄の摂取により有意な改善が認められた。グリコアルブミン値は、血糖値同様すべての群で低下が認められた。ブドウ糖負荷試験 2 時間値とグリコアルブミン値が共に低下したことから、ALA と鉄の摂取が食後血糖の改善に寄与したと考えられる。
文献:
Higashikawaら2013(PMID: 23759263)

煩すぎ君の私が考えたこと

空腹時血糖の有意な改善

摂取前後の空腹時血糖を以下に示します。

・ プラセボ群:1.5 mg/dLの減少(108.1±12.8mg/dL→106.6±11.5mg/dL)
・ ALA 5mg+鉄0.6mg群:1.3mg/dLの減少(107.8±11.1mg/dL→106.5±11.4mg/dL)
・ ALA 5mg+鉄1.8mg群:4.5 mg/dLの減少(110.9±11.9mg/dL→106.4±9.3mg/dL)
・ ALA 15mg+鉄1.8mg群:3.2 mg/dLの減少(105.9±7.4mg/dL→102.7±7.8mg/dL)

高めの空腹時血糖値が正常(100mg/dL未満)に近づいています。しかしながら、プラセボ群との差は小さく、3ヵ月摂取した後でも正常高値の範囲内のままです。また、ALA群には用量相関性が認めらません。製品含有量同等のALA 15mgでは有意(p=0.029)な減少でしたが、減少幅は小さく、臨床的に意味があるのかどうか。

ブドウ糖負荷試験で改善

下図は、ブドウ糖負荷後2時間の血糖値について、ベースライン時と摂取3ヵ月後とを比べた変化量を示したものです。ALA 15mg+鉄1.8mg群がプラセボ群と比べて有意な改善を示しています(p=0.025)。

アラプラス糖ダウン ブドウ糖負荷試験の結果

各群棒グラフが3つ示されていますが、全ての被験者の結果は黒い棒グラフです。一番右の白い棒グラフは、経口ブドウ糖負荷試験でベースライン値200mg/dL以上を示した10例程度の限られた人(集団)の結果です。

公式サイトに食後血糖値の変化量の図がありますが、上記の白い棒グラフの結果を使っており、言い過ぎでは?消費者の誤解を招く恐れを懸念します。

糖ダウンのイメージ

グリコアルブミン値を低下した

グリコアルブミン値の変化率(平均値)は以下の数字です。3カ月後のプラセボ群とALA 15mg+鉄1.8mg群との間に有意差があるようです。ただ、この変化が臨床的に意味のある差なのかどうか。

・ プラセボ群:0.2%の減少(16.6±1.6% → 16.4±1.7%)
・ ALA 5mg+鉄0.6mg群:0.3%の減少(16.8±1.8% → 16.5±1.7%)
・ ALA 5mg+鉄1.8mg群:0.4%の減少(17.0±1.7% → 16.6±1.8%)
・ ALA 15mg+鉄1.8mg群:0.4%の減少(16.4±1.3% → 16.0±1.3%)

考えたこと。思うこと。

空腹時血糖の是正機能は大きくないですが、食後高血糖が高い人には期待できそうにもみえます。しかし、医薬品開発でいえば第1/2相試験程度の試験ですし、プラセボとの差が小さいため、あまり期待はできないかな。

さいごに

以上、A4サイズに治まる程度での「アラプラス糖ダウンの機能について調べたこと」でした。
なお、「煩すぎ君の私が考えたこと」は調べた範囲で私が考えたこと、思うことであり、あくまでも個人の感想であるとご理解ください。

A4版は下のリンクから。PDFファイルが開きます。
機能性表示食品 アラプラス糖ダウンの機能について調べてみた

  • 管理人はこんな人

    こんにちは。
    私は、薬剤師の資格を持つ元製薬会社社員。退職後は医学論文の素案作成、そして資格や経歴と無関係の仕事を主にしてます。
    知人から薬について相談されたことをきっかけに、一般用医薬品や健康食品について勉強を始めたところです。
    「健康食品&サプリメントWATCH」は、勉強した内容、そして考えたことをA4用紙1枚程度に書き出した、いわば個人メモです。個人メモですが、どなたかの役に立つことを願って...。
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