山で起こる問題とその回避

自然が相手の山では様々なことが起こり得ます。事前に対策を考えておくことが山あるきのリスクマネジメントです。

山で起こる問題

山で起こる問題は、救急法に記載した内容の他に地形や天候が直接的あるいは間接的要因となるもの、登山者自身が原因となるものがある。ここでは、それらに起因する問題とその回避方法について考えてみる。

道迷い

友人に「山に行く」というと、十人に八人は「怖くない?」と尋ねてくる。どうやら、「山=岩=怖い・危ない」と考えているようだ。もちろん、慣れない人には岩場は危険を伴うことがある。しかし、山あるきに慣れた人でも慣れていない人でも道に迷う危険性は低くなく、これが遭難の原因の一つになっている。

山で歩いているうちに踏み後がなくなり、藪漕ぎになったらまず道を間違えている。遭難する人の多くは「なんとかなる」とそのまま歩き続けるが、対処法は来た道を引き返すことが一番だ。視界が良い場所に出ることができれば地図とコンパスを使って現在いる場所の確認ができる。それ以前に、地図とコンパスがあれば、事前に通過するルートを地形図で確認しておき、例えば通過するピークの数や地形の特徴を頭に入れておけば迷う心配は少ない。

ガス等で視界が利かない場合、できればガス等が晴れるのを待つ方が良い。このようなときに勘に頼って歩くと、自分では真っ直ぐに進んでいるつもりでもいつの間にか円を描くように同じ場所をグルグル回っていることがあるこれをリンデワンデリングという。私も御嶽山スキー場内にテントを張ったとき、トイレをレストランで借りて戻る道が分からなくなったことがある。少しガスのかかったスキーゲレンデにカクテル光線が方向感覚を麻痺させた。往きはわずか数分の距離だったが、戻るのに30分以上費やした。視界の悪いときは要注意である。うかつに歩くと、沢や崖から転落や滑落の危険がある。

バテ&パーティからの遅れ

北アルプスのような大きな山行のときは、どうしても夜行バス、夜行電車や夜間運転となり、寝不足が原因で翌日の体調が万全でないことがある。また、パーティで山に入った場合、オーバーペースでバテを起こすこともある。これは言語道断だが、トレーニング不足が原因のこともある。私も槍〜西穂縦走のトレーニングとして剱岳に登った時、到着日に山頂を踏もうと思ったがトレーニング不足のため一服剣を登る途中で座り込んだことがある、このとき大久保由美子さんらしき人に「ここは落石が多いから危ない。もっと先で休憩しなさい」と言われながら動けなかったことがある。

バテてしまった場合、兎に角、休憩を取ること、直ぐにエネルギーとなる糖分を補給することが回復への早道である。このとき、私のように危険な場所で休憩を取らず、十分に安全な場所まで移動しなければならない。特にパーティのように大勢で行動している場合には、大勢を危険に曝すこととなる。

一方、パーティでの行動では、このような人を出さないように、上りの前後や安全な箇所で休憩を取るようにしたい。間違っても早い人と遅い人のように、パーティを分けてはいけない。これは遭難の危険性を高めることになる。もしも分かれた場合、途中に分岐点があれば一方が道に迷ってしまうことがある。パーティで入山しながら一部の人だけ下山して、残りの人がどこに居るか分からないといった遭難の話は良く耳にする。パーティを組んだら、別行動せず、一緒に行動するように。

天候の急変&落雷

山の天気は変わりやすいと昔から言います。実際のところ、小1時間前には晴れていたのに、急に霧がわきあがってきて雨や雷なんてことがあります。日本アルプスで夏に山あるきする場合、午後は必ずといっていいほど雨になります。従って、対策としては、早朝薄暗いうちに出発し、昼過ぎには目的地に到着するようなプランを立てること、途中で雨にあってしまったときのため、防水対策をしっかりしておくことが大切です。防水対策はカッパのみでなく、靴も忘れてはいけません。私の知り合いも、体は濡れないけど足はびちょびちょだった人がいました。

高山病

高度が上がると酸素量が減ります。3000mの高さでは地上の2/3の酸素しかありません。この薄い空気のため、人によっては2000m程度から高度障害(高山病)を発し、倦怠感、頭痛や眠気を覚えます。低山では強く、元気な人も高度が上がると動きが鈍くなるなど、高度障害は人を選ばずに起こります。(そのような人は足が速く、さっさと高度を上げてしまうからかもしれませんが...)

対策の一番は高度を下げること。症状が治まります。睡眠を十分に取ること、ゆっくりと歩くことも高度障害の予防に役立つようです。ちなみに、燕岳に行ったとき、合戦尾根の途中で同行者が軽い高山病となり、眠ってしまった経験があります。その日は燕山荘のテント泊をし、翌日は縦走の予定を変更して下山しました。(高度を下げていませんが、燕山荘の近くまで登っていたことからテントで休ませて様子をみました)

動物・昆虫との遭遇

山菜取りを含め、山で遭遇する動物や昆虫のうち、被害が大きいのはくまとスズメバチかと思います。クマに出会ってしまったら、視線を逸らさずその場に立ち止まります。襲ってくる気配がなければ、そのまま後ずさりし、ゆっくりと離れることが大事だそうです。クマの方も人を怖がります。音を立てたり、声を出しながら歩くことがクマに出会わない予防策でしょう。一方、スズメバチですが、人が巣に近づくと必ず飛んできて警戒します。「カチカチ」は攻撃音です、この音を聞かないうちに巣の方向から離れましょう。万が一スズメバチに刺された場合、傷口から毒を搾り出して流水で流すようにしましょう。この際、決して口で毒を吸い出そうとしないこと。鉢毒で最も怖いのはアナフィラキシーショックです。スズメバチに刺されたら一刻も早く下山して医者に診てもらいましょう。

なお、私は宮島で猿の群れに囲まれ、六甲ではイノシシに睨みつけられたことがあります。山はもともと動物達が暮らしている場所。そこに人間がおじゃまするのですから、動物達を怒らせたり、刺激することは絶対にやめましょう。

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